かの人間が見るのは希望か絶望か。

着々と開発が進んでいる東京は虎ノ門地域。遠くからでも目に留まる「虎ノ門ヒルズ」には、膝を抱えた“文字人間”が鎮座しています。


巨体に似合わない体育座り

地上52階建て、高さ247mの超高層複合タワー「虎ノ門ヒルズ」には、エントランスやエレベーター・ホール、壁にさまざまなパブリックアートが展示されています。 さまざまなパブリックアートがある中で一際目を引くのが、オーバル広場に展示されている《ルーツ》という大型な彫刻です。


近くに寄って見てみると、ひらがな漢字や英語など異なる文字で作られているのが分かります。高さ約10メートルにも及ぶ巨大な“文字人間”さんは、包帯のような白く帯状のもので形作られており、膝を抱えて遠くを眺めている姿が印象的です。 

この大型彫刻には、“Celebration of Life”一人一人の人間の存在の素晴らしさや、“Celebration of Beauty of Global Community(Harmony)”この世界(の調和)の美しさへの讃称が込めてられているとともに、虎ノ門ヒルズと人々との架け橋、そして人々の憩いの場になって欲しいという、ジャウメ・プレンサ氏の願いも込められています。 


国の文化や歴史を現す8つの言語は国際性を表現し、世界の調和の美しさを表しています。さらに、膝をかかえて座る“人間の形”は、人間誰もが、内側に素晴らしい美しさを秘めており、人の内側や内面に目を向けて欲しいという思いを込めています。

 「虎ノ門ヒルズにジャウメ・プレンサ 《ルーツ》 が誕生!」 よりジャウメ・プレンサ氏の言葉


設置場所である虎ノ門ヒルズ側も、この作品に「未来の東京を見つめる 《ルーツ》をシンボルとして、虎ノ門エリアに新しい文化や暮らしが根づき、ここから未来につながる創造や革新が生まれるような街に成長していくこと」という願いを込めているそう。 


空洞の作品にこれでもかと前向きな想いが込められているのですが、私は見る度になんとなーく物悲しさを感じてしまいます。 しっかりと膝を抱える腕、やや前に突き出た頭部、すぼめた肩に、 何とも言えない哀愁が漂遊しているのを感じてなりません。


芝生が広がる広場は子どもの遊び場にもなっていて、子どもが走ったり、中に入っている時には和やかな空気が感じられますが、一変誰もいなくなると、広場にポツンと取り残された迷子のような悲しさが…。 


「いいな いいな 人間っていいな 

美味しいおやつに ほかほかご飯 

子供の帰りを待ってるだろな 

ぼくも帰ろう お家へ帰ろう」 

 なんて歌が勝手に脳内再生されそうです。 

しかもこの《ルーツ》、2020年の東京五輪でメインストリートとなる環状二号線を眺めるように設置されているとのこと。新型コロナウイルスの感染拡大で東京五輪が開催できるか怪しいので、余計にブルーな空気を感じ取ってしまいます。 


東京五輪の直前、2020年6月には「虎ノ門ヒルズ」という名前の新しい駅も誕生。せっかく新しい駅もできるので、文字人間さんには明るい未来を見てもらいたいですねぇ。 


それでは、でんでんでんぐり返って バイバイバイ! 

ジャウメ・プレンサ《ルーツ》(2014)

(英名:JAUME PLENSA《Roots》) 

サイズ:5.5 × 6.5 × 10m

材料:ステンレススチール、塗装

展示場所:虎ノ門ヒルズ オーバル広場

ジャウメ・プレンサ/ Jaume Plensa

1955年、スペイン・バルセロナ生まれ。独創的な立体作品の制作で知られる、スペインを代表する世界的なアーティスト。鉄やブロンズ、ガラスなどの素材に哲学的なメッセージを込めた作品は、造形性の高さとコンセプトの深さを高く評価されている。日本では2010年瀬戸内トリエンナーレにて瀬戸内海の男木島に船の発着場の設計。

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