多彩なデザインの世界が花開く「いせさきメイセン ーメイセンは二度死ぬー」

まるで絵画のようなデザインが目に新しい企画展「いせさきメイセン ーメイセンは二度死ぬー」が松屋銀座7階デザインギャラリー1953にて、3月23日(月)まで開催されている。


大正・昭和のファストファッション、圧巻の銘仙の世界

昭和初期、銀座の街を行き交う女性の二人にひとりは銘仙を装っていたといわれるほど、空前のブームを引き起こしたという銘仙着物。そもそも銘仙とは、明治から昭和初期にかけて女性を華やかに彩った絹織物の日常着のことだ。同展ではその代表的な産地である群馬県伊勢崎市で生産された、世界に類をみない高度な技法「併用絣(へいようがすり)」にフォーカスをあてつつ、46点に及ぶ新旧の銘仙コレクションの数々が展示されている。

須藤玲子がデザインを提供した「21世紀銘仙」

同展の目玉は、2016年に奇跡的に復元された併用絣の技法で制作された「21世紀銘仙」。併用絣とは「経糸(たていと)」と「緯糸(よこいと)」の双方に型紙を用いて糸の状態で染を施し、その糸を織り上げることで複雑な図柄を表現する技法のこと。その高度さから他の産地が容易に真似をすることが出来なかったこともあり、大正から昭和にかけて伊勢崎のみで制作されていたが、日本人の洋装化やその複雑さから一度は完全に廃れてしまった。


今回展示されている「21世紀銘仙」は、その圧倒的な美しさと独自性を再発見した杉原みち子さん、金井珠代さん(いずれも伊勢崎市在住)が中心となり、職人達と共に3年に及ぶ歳月をかけて奇跡的に復元されたもの。復元にあたっては世界的に活躍をするテキスタイルデザイナー須藤玲子が、NUNOのメンバーなど有志のデザイナーと共にデザインを提供した。

写真やイラストで読み解く銘仙の技法

銘仙の技法にフォーカスした本展では併用絣以外にも「括り絣(くくりがすり)」「板締め絣(いたじめがすり)」「解し絣(ほぐしがすり)」など、技法ごとに銘仙のバリエ−ションを紹介されている。


先染めの織物である銘仙では、アシと呼ばれる糸の微妙なズレが醸し出す柔らかい図柄の輪郭線が魅力だが、展示はそれぞれの技法が持つ豊かな表現力をその特徴とともに展示。会場内には14に及ぶ併用絣の制作工程を紹介する写真やイラスト、刷毛や型紙などの道具類が展示され、職人達の高度な技術とものづくりへの情熱をうかがい知ることができる。

まるで絵画のような銘仙コレクション

今回の展示のクライマックスは、壁一面に並ぶ32点に及ぶパネル化された当時の銘仙コレクション。日本独自の美意識がアール・デコをはじめとする欧米の文化の影響を受けながら独自の世界観に発展した銘仙は、時代の息吹を大胆に取り入れた、いわば当時のファストファッションともいえる存在だ。


花鳥風月からモダンアートを思わせる幾何学まで、多彩なデザインの世界が花開いた銘仙から、新しい時代の訪れを謳歌する当時の女性たちの姿が垣間見える。

2度目の死を迎えるも、イギリスに渡った“メイセン”

今回展示された「21世紀銘仙」はイギリスのアートとデザインの美術館V&Aでの収蔵が決定し、2020年2月29日よりV&Aで開催される展覧会「Kimono: Kyoto to Catwalk」で初めて公開された。一方でV&Aへの収蔵が決定したその矢先、伊勢崎では「併用絣」の制作に欠かせない数々の道具を雲散するという事態に見舞われ、「併用絣」はその二度目の死を迎える。


復活が未来に委ねられた今、世界が注目する伊勢崎銘仙の驚くべき技術と斬新なデザインの世界をお見逃しなく。

第764回デザインギャラリー1953

企画展「いせさきメイセン ―メイセンは二度死ぬ―」

会期:2020年2月26日(水)〜3月23日(月)

開催時間:松屋銀座の営業時間に準じる。ただし、最終日は午後5時閉場。

会場:松屋銀座7階デザインギャラリー1953

観覧料:無料

主催:日本デザインコミッティー

共催:「いせさき銘仙の日」記念イベント実行委員会

協力:21世紀銘仙プロジェクト(杉原みち子 /金井珠代)/上毛新聞社/伊勢崎市図書館/いせさき明治館

展覧会担当:須藤玲子

企画展URL:http://designcommittee.jp/2020/01/20200226.html


✳︎新型コロナウイルス感染症拡大防止のため展覧会中止や延期などが相次いでいます。お出かけの際には公式HP等で情報をお確かめください。  











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