人が被る芸術品! 見るだけでも楽しいマスクフェス

日本最大級のマスクイベント9月開催決定!

コロナウィルスによって、道行く人みな、マスク、マスク、マスク、マスク…の時代が到来しました。そんななか、2020年9月5日に日本最大級􏰀のマスクイベント「TOKYO MASK FESTIVAL vol.9」(以下、マスクフェス)が開催! 街中のマスクとは一味も二味も三味も違う、愛すべきマスク達に出会えます。


9月のマスクフェスを前に、同記事では2020年3月に開催されたマスクフェスの様子を振りかえります。後半はライター・あっちんぶぅが独断と偏見で選んだイチオシのマスク作家さんの作品をご紹介。9月のマスクフェスの予習として、どうぞご参考に!


そもそも「マスクフェス」ってなに?

2020年9月5日の開催で9回目となる「TOKYO MASK FESTIVAL」。マスクや仮面はもちろん、覆面、かぶりもの、フード、着ぐるみ、ヘルメット、異形頭、プロテクター、ゴーグル、そのほか顔につけるもの、かぶるもの、着るもの、かけるもの、そういったものに心惹かれてやまない“マスク好きによるマスク好きのための祭典“です。


開催場所はお馴染み、東京芸術センター。北千住駅から徒歩5分ほどの場所にある複合的なイベント会場です。2階の「ホワイトスタジオ」入口でチケットを購入したら、いざ会場内に侵入。


出展者ごとに設けられたブースには異種様々なマスクが所狭しと並び、好みのマスクを身につけたマスラー達(マスクを被る方を筆者は勝手にマスラーと呼んでいます)が毎回ひしめき合っています。


日本最大級のマスクイベントということもあって、マスクを着用されている方がほとんど。筆者はマスクは着けずに鑑賞する派のノンマスラーなので、素顔で会場入りすることに一抹の恥ずかしさを感じたりもします。


マスクフェスに何度か足を運んでいると会場入りもお手のものですが、はじめてイベントに参加しようと思った時は、マスクをつけた人達や異形頭の人々がひしめき合う異様な空間におっかなビックリ。コスプレや撮影会などのイベントにとんと縁がない筆者は入るだけなのにかなり緊張し、このまま帰ろうとさえ思いました。


それでもガスマスク購入というミッションを達成するため、受付に座る普通の格好のお姉さんから恐る恐るチケットを買い、パンクスタイルやアニマル頭のマスラーさん達を恐る恐る覗き見し、お目当ての出展ブースにこれまた恐る恐る向かう……。


会場に入るまでも、入ってからも、キョロキョロとかなり挙動不審でしたが、お目当てのブースでガスマスクを発見すると、それまでの緊張が解けるように、どのマスクを連れて帰ろうかとそればかり考えていました。


その時会ったガスマスクは今も大切に自宅に飾っています。


開催回数を重ねるごとに参加する世代も広がり、前回のマスクフェスでは家族と一緒に参加する小学生を見かけることも。私が話した女の子はSNSで見かけたマスク作家の方が出展されるということでマスクフェス参加を決意したとのこと。ただマスクは高額で手が出ないので、手作りの狐マスクを作って持って来ていました。少女と出展者さんが一緒に写真を撮っている様子を見て、まったくの部外者ですが心の底からほっこり♡


販売されているマスクは数千円〜数十万円と価格の幅は広めなので、小学生がお小遣いで購入するには確かにお高めです。さらに、財力を手に入れた大人でさえ買うのを一瞬躊躇う高額マスクも多いので、買う気で参戦する際には数万円持参しておかないと、ATMに走ろうかどうか思い悩むかもしれません。


人が被る芸術品! 見るだけでも楽しいマスク作品

マスクというと、被るのが基本。というか、被るからこそのマスクですが、個人的には優れたマスクは芸術品と同じ価値があると思っています。


「いや、被れよ」というマスラーさんや作家さんも多いかと思いますが、その意見を敢えて無視して、ここからは筆者の独断と偏見で、ただただ愛でたいマスク作家さんをご紹介していきましょう。


着けることで本性を晒すマスク「ANOS」

紅のような真っ赤なマスクや、まるで木の精霊のようなマスク、羽をモチーフにしたマスクなど、洗練されたデザインが目を引くのが、「ANOS」さんの作品です。


ANOSさんにとって、マスクには素顔を隠したり別なものに見せかける以上に、隠された自分を表現する場になるのではないか、と考えるようになったそう。「仮面を着けることでその人の本性が現れたら、本人も知りえない本心が仮面という形で具現化したら…それらが私が作る作品のコンセプトになっています」と語ってくれました。


自らの感情をモチーフにデザインされるということで、珍しいデザインのマスクが並びます。

例えば、ANOSさんの作品群でも一際目を引くのが、鋭い角を有した《ANIMUS》。心理学用語で「女性の心の中に潜む男性イメージ」という意味だそう。女性の中に隠された、あるいは抑圧された男性性が角や前面の鋭さにつながっています。

普段からマスクなどの造形物を製作しているANOSさんは、マスクフェスというイベントがある事を知り、自分の作品を発表してみようと思い立ったそう。


自分に内包しているデザインを立体化し、自分の作りたいものが作れる場所、そしてそれを発表して、共感してもらえること自体に価値を感じているともおっしゃっていました。


洗練されたデザインと技術が光る、クオリティの高いマスクたち。出展されているマスク数が少ないこともあって、気付けばマスクが減っているという人気ぶり。ご紹介した《ANIMUS》も艶やかな紅に加えて、真っ白バージョンもありましたが、撮影時には既に姿が見えなくなっていました。


ANOS

Twitter:@ANOS_maskmaker


古今東西の原始性が刻み込まれた「Masksmith」

フルフェイス型のフランケンシュタインマスク《Victor》がお出迎えするのは、レザーマスクアーティストの「Masksmith」さん。プロの特殊メイクアーティストとして活動していたMasksmithさんは、その後独学でレザーマスクを製作します。


古今東西の様々な民族の仮面や皮を掛け合わせマスクは、不気味で呪術的な雰囲気を讃えながら、一方で視覚や聴覚、味覚といった人間感覚への疑問が表現されているようにも感じます。

例えば《See no evil》は、視界を遮れたデザインのマスク。盲目系のデザインが多いMasksmithさんのマスクは、おでこや目隠し布の上に眼球があしらわれてることがあります。従来の視覚を取り上げた上で、別の“視覚”を与えられるという、シックスセンス的な要素が多分に含まれていますね。また目隠しというフェティッシュな要素が入ることによって、他のクリーチャーマスクとは異なる艶かしい雰囲気が漂っています。

また、日本の伝統芸能の能面からインスピレーションを受けた作品も多数。《赤式尉》は能面の中でもポピュラーな翁を、そして《閻魔》は小べシミがモチーフに使われています。べしみとは口を真一文字に結んで踏ん張る様子で、力強さが特徴です。見慣れたデザインではありますが、能面は見る角度によって異なる表情を見せてくれるのが大きな魅力。「起伏ひとつひとつに意味が込められている」とMasksmithさんが語るように、造形的な美しさはもちろん、人が身につけ、舞うことで初めて完成するマスクと言えそうです。


ギョロリとした目や大胆な色遣いが見る者の恐怖感を高めるMasksmithさんのマスクの中で、可愛さが光るのが《Hell baby》。悪魔の赤ちゃんがコンセプトの同作は、おしゃぶりをつけた赤ちゃんにまるで泣いているようなカーヴィングが施されています。おしゃぶりは取り外し可能で、つけるのはもちろん、つけなくてもカワイイマスク。子どもにマスクをつけさせようとしている筆者としては、個人的に子どもサイズを希望しています。

Masksmith

Twitter:@masksmith00


“魔スク”制作の「フィッシュタイガー」

「フィッシュタイガー」さんが作るのは、マスクもとい“魔スク”。感情や性質にマスク状の形を与えて表現するという作品で、裏世界の美術文化の一種という悪魔的アートをコンセプトに作られています。

人形をピアスに仕立てた《粛清》、鎖を纏った《屠殺》、革ベルトでぐるぐる巻きにされた《無価値》など、ダークな雰囲気満載のマスクが目白押しです。

一方で、ヴェネチアン・マスクを思わせるクラッシな《孤独》や、レースがあしらわれた《讃美歌》、隻眼の花嫁のための《祝福》など、可愛らしさのあるマスクがあるのも特徴。中でも、幾本もの脚が口を覆う《執着》は、蜘蛛のようなアイマスク部分と脚だけの飾りで不気味さを残しつつも、滑らかな脚の曲線美で女性的な美しさが表現されているマスクで、筆者は大のお気に入りです。

マスクを制作されている作家さんの中には自分ではマスクを被らないという人が意外にも多いですが、魔スク制作者の鯱さんは自らもマスクを被るマスク好き。ご自身もマスクを被るということで、同じ作品は作らないこと、自分の感性を貫くことといったこだわりに加えて、装着後の不便を減らすように工夫するなど、装着者の視点に立ってマスク作りを行っています。


フィッシュタイガー

Twitter:@orca_1226


怖いもの見たさが刺激されるバイオレンス造形マスク「Spitters」

アートユニットで活動されているSpittersさんが造るのは、暴力的で緻密なデザインが特徴のマスクたち。ペストマスクや狐面など、オーソドックスな型も、Spittersさんにかかれば異世界の住人のようです。

「キャラクター性が際立つことをモットーに自分たちが欲しいと思うマスク作りを心がけている」ということで、エイリアンや化け物など、暴力的なクリーチャーの世界観にピッタリ。

普段は映画や特撮業界で働いているというSpittersさんのマスクは、細かな部分まで作り込まれています。バイオハザード1が怖すぎて最初にゾンビが登場した時点でゲームリタイアした私にとってはそのリアルさが怖いですが、怖いもの見たさで近くに寄ってマジマジと鑑賞。思わず触ってみたくなる質感も魅力です。


Spitters

Twitter:@Spitters999


人間の原始性を前面に押し出したマスク「仮面虎牢関」

現代においてマスクに求められる意味や役割は個人によって異なります。けれどもそれ以前には、祭りや祈りといった祭儀の際に人間ではないものを表現したり、舞台で何かを演じるための小道具の一種でした。


「仮面虎牢関」のブースには、バリの伝統的なお面やヨーロッパで拷問に使われていたマスクなど、実在するマスクをモチーフにしたマスクが数多く並びます。

幼少期に魅了されたというインドネシアの「ガルーダ面」は、鳥の姿をした神様・ガルーダのお面のこと。グリンとした大きな目にくちばしを思わせる口元。民族博物館などに行くと色とりどりに彩られた民族面もありますが、仮面虎牢関さんのものは風合いが感じられる落ち着いた色彩で、個人的にはこちらの方が好みです。

また、拷問系のマスクでは、「浮気や不倫をした既婚女性に被らせ往来に立たせ、嘲笑させる」ための《ガミガミ女のくつわ》や、内側に多数の針を有する有名拷問器具のアイアン・メイデンをモチーフにした《鋼鉄の処女》、顎を頭蓋骨をガッチリ抑えつけて衰弱死させる《処刑の鉄仮面》など、中世ヨーロッパを中心に拷問や罰として使われていたマスクなど、外見そのものだけでなく、その使い道に興味が残るマスクも多数。

ほかにも、陰陽師の面布をテーマにした角ありのアイマスク《符呪の鬼面》や、ハニワをモチーフにしたコミカルな《ハニワくん》など、人間の原始性を感じさせるので、その由来や意味を知りたくなる仮面が盛りだくさんです。


「仮面屋」別邸・虎牢関

Twitter:@kamenya_korokan


ファッションアイテムとしてのマスクを目指す「Cassandra」

「東洋×Street」をテーマに仮面を製作されているCassandraさん。仮面をファッションアイテムとして考えているCassandraさんは、着けたまま街に出たいと思えるマスクをデザインされています。

そのため、マスクの大きさは他のものに比べると小ぶりです。ドクロ型や、マスク作りのきっかけともなった狐面、下顎のみの小物マスクなど、顔にフィットするタイプの型が多数。日常的に使えるマスクがテーマなので、マスクサイズにもこだわりを持っているとのことです。

ドクロ型のマスクには、怨めしい姿の遊女が描かれた《さくら》や、つちぐもりを意味する《霾(つちふる)》、牛鬼と虎が対峙した様で美しく彩られた《髑髏面 -鬼門- 》など、刺青が入ったドクロ仮面はベーシックな形の仮面でも存在感があります。


Cassandra

Twitter:@make_cassandra


自分でマスクを作りたい人にも嬉しい「アルチザン」

アルチザンこと、kazumori kawatsuさんは、レインボー造形で20年以上もキャラクター造形に携わってきたマスク作家さん。独立後は着ぐるみや特殊衣装をメインとした造形を行う傍ら、造形のテクニックや楽しさを伝える為のワークショップ活動をされています。

ブースに登場したのは、敵役が被っていそうなエイリアンマスクや、吸い込まれそうな蒼い球が印象的な一つ目マスク、そして、宇宙服を身に纏った小さな人間がちょこんと座るマスクなど、精巧に作り込まれたSFマスク。

前回のマスクフェスでは本業がお忙しいとのことで、上記のオリジナルマスク販売は残念ながらありませんでしたが、ブースではマスクを作るためのベースキットが販売されていました。


完成品マスクの出展者さんが多い中で、マスクを作るためのキットが販売されているのはとっても珍しい。ベースキットを作ろうと思ったきっかけは、kawatsuさんがワークショップを開催された際に、「ヒーローのマスクとか作ってみたいけど、あの形がそもそも難しくて作れない」という意見。


マスク好きの1人として筆者も自分のマスクを作ってみようと思ったことがあるんですが、そもそも土台を作ることが難しいんですよね。何から手をつけて良いかわからない、どうしたら良いか分からないから作らない、となってしまうので、ベースキットがあればマスク作りのハードルも下がりそう。

「いろんな作家さん達の、個性的なマスクの数々を見たり買ったりして楽しむだけでなく、【作る】という事にもチャレンジしてみると、より楽しみ方も広がると思います」とkawatsuさんも力強くコメントして下さいました。


アルチザン

Twitter:@KazumoriKawatsu


自然の美しさと儚さを表現にした「工房 山羊蔵」

動物、植物をモチーフとした作品を得意とする「工房 山羊蔵」さん。粘土を使った彫刻で、ミクストメディアと呼ばれるジャンルのアート作品を制作されています。


もともと鳥や山羊、熊、猫などの動物と草花が共存した作品を制作されていましたが、マスクフェスという存在を知って初めてマスクを作ってみたいと思い立ったとのこと。当初は被るタイプのマスク作品を制作されることも考えたようですが、立体彫刻をメインで制作されてきたこともあり、「被る」より「飾る」ことを考えて作られた作品が展示されていました。

前回マスクフェスに登場したのは、《面 -狼-》と《面 -山羊-》の2つのマスク。タイトル通り、狼と山羊をモチーフにした作品は、まるで剥製のような出で立ち。どちらも凛々しい顔立ちに、様々な植物があしらわれています。

被るマスクではなく飾るマスクということで、山羊蔵さんには他のマスク作家さんとは異なるこだわりが。壁面のアート作品は目線に対し正面に飾られますが、鹿の剥製などは少し高い場所に見上げるように飾るのが一般的です。そのため、上記の2作品は目線より上に飾った時に一番良く見える形を意識して制作されました。


たしかに、少し下から見上げるように見てみると、狼のほんのりとした優しさや、山羊の雄々しさなど、正面から観るのとはまた違う印象を受けます。


工房 山羊蔵

Twitter:@yagigura


醜さをマスクで覆い隠す「ELECTRIC LADY」

「ELECTRIC LADY」さんが作るのは、オリジナルフィギュアのダーシーとスージーです。

ダーシーは大量の産業廃棄物によって産み出された妖怪(モンスター)。孤独で愛を求めているダーシーは、それ故に誰にでも愛されるウサギの衣装を身につけています。左右非対称の目と中央を縦断するファスナーのマスクが印象的なフィギュアです。それと同時に、体の内側に承認の欲求が隠されているというダーシー。


一方で、人間の少女に恋をした、ヘドロの悲しき妖怪(モンスター)をモチーフに作られたのが、スージー。自分の顔が見にくいと感じたスージーは少女のために、仮面をつけます。左右非対称の目と顔にかかるファスナーはダーシーと共通していますが、コロンとした見た目なので、よりマスク感が増します。

「マスクはポップカルチャー・文化的なものから現在のYouTuberみたいに、たくさんの可能性があると思うので、醜い自分をマスクを通して表現できればと思っています」と語るELECTRIC LADYさん。


どんな種類のマスクであれ、そこには本来の自分と異なる外見を手に入れるという願望が隠されています。綺麗なバラには刺があるように、かわいいマスクには毒がある。相反する2つのものを結びつけるのもマスクが為せる技かもしれません。


ELECTRIC LADY

Twitter:@electricladyxyz


お気入りのマスクのためにコロナ対策も万全に!


緊急事態宣言が出されていないとはいえ、新型ウィルスの猛威はまだまだ健在。当日会場では換気や更衣室の利用制限等、感染防止策が取られる予定。参加される方も検温や手洗い、うがいなど、個人でできる感染防止策でマスクフェスを楽しく過ごしてくださいね。


「TOKYO MASK FESTIVAL」vol.9

(第9回東京マスクフェスティバル)

日時: 2020年 9月5日(土)✳︎開場:12:00 閉場:17:00(再入場可、ただし14:00〜14:30は換気のため入場不可)

入場料:1000円✳︎小学生以下􏰁入場料無料(保護者同伴必須)

会場:東京芸術センター ホワイトスタジオ

住所:東京都足立区千住1-4-1

公式サイト:tokyomaskfestival.com

Twitter:@TOKYOMASKFES

facebook:tokyomaskfestival

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